6.リングスリーブ(E形)による圧着接続部分

6-1.リングスリーブ用圧着工具の使用方法等が適切でないもの

リングスリーブの選択を誤ったもの(JIS C 2806 準拠)

電気工事士 技能試験においては、電線相互の接続にリングスリーブの大、中、および小が用いられます。適切な圧着後の接続性能を確保するため、接続する「電線の径」と「接続する電線の本数」に応じて適切なリングスリーブを選定してください。VVF1.6mm×2本にリングスリーブの「中」を使用した欠陥事例VVF1.6mm×2本にはリングスリーブの「小」を使用

接続電線 (太さと本数) リングスリーブ
1.6mm 2本
3~4本
5~6本
7本
2.0mm 2本
3~4本
5本
2mm(1本)+1.6mm(1~2本)
2mm(1本)+1.6mm(3~5本)
2mm(2本)+1.6mm(1~3本)
2mm(3本)+1.6mm(1本)
2mm(1本)+1.6mm(6本)
2mm(2本)+1.6mm(4本)
2mm(3本)+1.6mm(2本)
2mm(4本)+1.6mm(1本)

圧着マークが不適切のもの(JIS C 2806 準拠)

リングスリーブ圧着時のマーク(刻印)を間違えてしまうと欠陥となります。特に間違いやすいのが1.6mm×2本の場合で、使用するリングスリーブは「小」ですが、圧着ペンチのダイスは「1.6×2小」となります。リングスリーブと圧着マークの関係については下記の表をご参照ください。圧着マーク(マーク)の間違いによる欠陥事例圧着マーク(刻印)の適切な事例

リングスリーブ 圧着ペンチ
ダイス 圧着マーク(刻印)
圧着ペンチのダイス「特小」 圧着マーク「〇」
圧着ペンチのダイス「小」 圧着マーク「小」
圧着ペンチのダイス「中」 圧着マーク「中」
圧着ペンチのダイス「大」 圧着マーク「大」

リングスリーブを破損したもの

リングスリーブ圧着後の先端処理の際、誤ってリングスリーブの先端を電工ペンチで切断してしまった場合が該当します。リングスリーブ先端の破損例リングスリーブの適切な圧着例

圧着ペンチのダイスに対してリングスリーブが大きすぎた場合や、圧着し損ねてリングスリーブに亀裂が生じた場合も欠陥です。

リングスリーブの先端または末端で、圧着マークの一部が欠けたもの

圧着接続する際、リングスリーブの中央に圧着ペンチのダイスを合わせますが、ダイスがずれて、リングスリーブの先端や末端でかしめてしまうことがあります。ずれた位置でリングスリーブをかしめ、圧着マークが欠けている場合は欠陥です。圧着マークの欠損例適切な圧着マークの位置

1つのリングスリーブに2つ以上の圧着マークがあるもの

電線をリングスリーブで圧着接続したが、抜けそうなのでもう一回かしめた場合2つ以上の圧着マークがあると欠陥リングスリーブに圧着マークは1つ

圧着マークを間違えたので、その横に正しい圧着マークを刻印した場合

1か所の接続に2個以上のリングスリーブを使用したもの

圧着接続した後、電線の接続忘れに気付いたので、リングスリーブを使って追加接続した場合などが該当します。そもそも電気工事士 技能試験においてはリングスリーブの個数が足りませんので、1か所の接続に2個以上のリングスリーブを使うことはありえません。1か所の接続点に複数のリングスリーブを使用1か所の接続点にリングスリーブは1個

技能試験中、リングスリーブは追加支給を受けることができます。圧着接続に失敗した、机の下に落として紛失したなど、足りない場合は挙手をして試験官に申し出てください。追加してもらったからといって不合格にされることもありません。

6-2.心線の端末処理が適切でないもの

リングスリーブを上から目視して、接続する心線の先端が一本でも見えないもの

圧着の心線挿入不足が1本でもあれば欠陥です。リングスリーブを上から覗いてみて、1本でも心線が見えないようであればアウトです。リングスリーブの上から全ての心線の先端が見えないリングスリーブの上から全ての心線の先端が見える

リングスリーブの上端から心線が5mm 以上露出したもの

リングスリーブに差し込んで圧着したまま先端を切り揃えていない場合は、端末の処理不適当として欠陥にされる可能性があります。切り揃え、且つ、心線が5mm未満でしたら問題ありません。心線端末処理が適切でない場合の欠陥事例心線端末処理が適切な事例

絶縁被覆の剥き過ぎでリングスリーブの下端から心線が10mm以上露出したもの

電気工事士 技能試験においては圧着接続部の絶縁被覆処理が省略されていますが、実際の電気工事では絶縁テープを巻いて圧着部を絶縁保護します。心線が大きくはみ出していると、うまく絶縁処理が行えませんので欠陥となります。絶縁被覆の剥き過ぎで心線が10mm以上露出絶縁被覆の適切な長さ

心線の端に合わせて圧着した場合、リングスリーブ下端と絶縁被覆までの長さが長くなりますので、心線と絶縁被覆の境目付近をリングスリーブの下端に合わせて圧着接続してください。

ケーブル外装のはぎ取り不足で、絶縁被覆が20mm 以下のもの

実際の電気工事の現場においては、回路の増設や変更を見越してケーブル外装を長めに剥ぎ取ります。ケーブル外装の剥ぎ取り不足で絶縁被覆が短いと、圧着に失敗したり心線に傷が付いた場合にやり直しが困難となります。アウトレットボックスまたはジョイントボックス内のケーブル外装に関しては、絶縁被覆が60~70mm程度残るよう、ケーブル外装は約100mm剥ぎ取ってください。ケーブル外装のはぎ取り不足ケーブル外装の適切な長さ

絶縁被覆の上から圧着したもの

電線をリングスリーブで圧着接続する場合、電線の本数が多くなればなるほど絶縁被覆の上から圧着しやすくなります。リングスリーブの中に絶縁被覆が入ったまま圧着すると、心線同士の接触面積が少なくなって抵抗が増大します。その結果、発熱&火災の原因となりますので、電気回路的にはつながっていても欠陥となります。リングスリーブを絶縁被覆の上から圧着した欠陥事例rリングスリーブの適切な圧着事例

より線の素線の一部がリングスリーブに挿入されていないもの

圧着接続の際、より線がばらけないよう、素線をしっかりとねじってください。ねじりが不十分ですと素線の末端がばらけやすくなり、素線の一部がリングスリーブからはみだす原因となります。より線の場合の不適切な圧着事例より線の場合の適切な圧着事例