油圧式圧着工具
電気工事士 技能試験においては、油圧式圧着工具を使うことはありません。しかし、電気工事の現場では、14cm2を超える裸圧着端子、またはスリーブと電線との接続には油圧式の圧着工具が使用されています。
工場やビルなどの電気工事においては、22mm2や38mm2といった断面積の大きい電線が多数使用されており、また、容量の大きい開閉器や電磁接触器などの機器、あるいは端子台等への電線の接続は、サイズの大きい丸型端子やY型端子などが使用されることが多いため、油圧を利用した圧着工具が用いられます。
油圧式圧着工具とは何か?
片手で操作できる片手式圧着工具は、14mm2以下の呼び寸法の圧着端子やスリーブと、電線との接続に使用されています。それを超えるサイズの端子には、手動両手式、油圧式あるいは電動式の圧着工具を使用します。
ここでは、油圧式圧着工具(写真参照)の使い方を解説します。油圧式圧着工具で圧着接続できるのは、
14/22/38/60/70/80/100/150mm2
程度の圧着端子またはスリーブです。対応可能な端子のサイズは油圧式圧着工具により異なりますので、使用の前によく取扱説明書等をよくご覧ください。
使用する端子またはスリーブは、電線のサイズ及び本数に応じて適切なものを選定してください。
裸圧着端子 裸圧着スリーブ |
サイズ(呼び寸法) | 電線抱合容量(mm2) |
---|---|---|
14 | 10.52〜16.78 | |
22 | 16.78〜26.66 | |
38 | 26.66〜42.42 | |
60 | 42.42〜60.57 | |
70 | 60.57〜 76.28 | |
80 | 76.28〜 96.3 | |
100 | 96.3 〜117.2 | |
150 | 117.2〜152.05 |
ダイスについて
さまざまなサイズの端子に対応するため、ダイスは交換式となっています。この油圧式圧着工具の場合には2種類のダイスがあり、装着する方向を変えることにより、14/22/38/60mm2に対応することができます。
対応する圧着端子のサイズ(呼び寸法)がダイスに明記されていますので、使用する圧着端子の大きさに応じて適切なダイスを選定してください。
油圧式圧着工具の使用前準備
油圧式圧着工具には、圧着と圧着を解除するためのダイヤルが取り付けられています。ダイヤルを時計方向に回すと圧着、反時計方向に回すと解除となります。作業を終了した後は一旦圧着を解除し、ダイヤルを時計方向(圧着側)にセットした状態で収納(保管)してください。
また、使用前はダイヤルが確実に時計方向にセットされていることを確認してください。ダイヤルが反時計方向にセットされていると、いくらハンドルを操作してもダイス部が動作しません(ダイスが上昇しません)。
写真のラベルに記載されていると思いますが、故障の原因となるので空圧着はしないでください。空圧着とはダイス部に端子及び電線をセットしていない状態で圧着作業を行なうことです。
ダイスは上方向(写真参照)に引っ張ると簡単に外れますので、適切なサイズのダイスを油圧式圧着工具にセットします。セットした状態で見える数字がダイスのサイズとなります。写真の場合は、呼び寸法14のダイスを装着した状態です。
油圧式圧着工具の基本的な使い方
それではこれから油圧式圧着工具の使い方を写真を交えて解説します。
操作するハンドル側を上、反対側のハンドルを下(床、地面)、つまり起こした状態で油圧式圧着工具を使用すると作業しやすいです。
まず片手で油圧式圧着工具のハンドルを操作し、圧着端子をダイス部に仮止めします。端子が変形しない程度、ダイス部から抜けない程度に固定してください。
圧着端子に絶縁被覆を剥いだ電線を挿入します。
絶縁被覆の剥ぎ取り長さは、電線の心線部が端子のろう付部からおよそ1mm程出る程度です。リングスリーブのときは後から端末処理ができますが、端子の場合は端末処理が簡単にはできません。ですから、圧着接続前に絶縁被覆を適切な長さに剥ぎ取ってください。
電線が端子から抜けないように注意し、圧着完了のショック(定圧弁が動作するまで)を感じるまでハンドル操作を繰り返します。
ダイヤルを反時計方向に回すと、ダイス部が引っ込んで圧着が解除されます。
圧着接続の完了です。写真ではちょうど反対側になりますが、使用したダイスが確認できるよう端子に圧着マークが付いています。